#book 伊坂幸太郎『魔王』


図書館で見つけたので、ひさびさの伊坂幸太郎。『死神の精度』以来。

設定が今の社会情勢とシンクロしていて、ある種の恐怖を感じる作品。もちろん、主人公 安藤兄や安藤弟のような超能力が現実に都合良く現れるわけではありませんが、作品中で描かれる現状に対する諦観した雰囲気、そして、その反動にあるリーダーシップへの希求は、2010年8月、まさに今ここにある社会のムードだと思いました。

そんな社会のムードをかえていくキーになるのが犬養。客体、第三者的にしか描かれませんが、新しい政治化としての犬養のイメージは強烈です。言葉一つ一つが鮮烈で、鋭利。

「五年だ。もしできなかったら、私の首をはねればいい」

「・・国の未来への道筋を誤った、と辞任した首相はいない。なぜだ?選挙で敗北して辞任はしても、それ以外では、辞めない。誰も誤っていないのか?・・」

「・・この国の人間の最も基本的な喜びは、「お前、これ知らないだろ?」という優越感で、それを助長しているのがインターネットである・・」

「お前たちのやっていることは検索で、思索ではない」

個人的に、主人公の安藤兄弟や詩織ちゃん以上に魅力的なキャラクターに思えました。終わり方が余韻を残し過ぎな(悪く言えば、よくわからない)終わり方だったので、せめて、犬養が善なのか悪なのか、優秀だったのか馬鹿だったのか、もう少し読んでみたかった、という気がします。

ストーリーそのものには直接関係しませんが『死神の精度』の千葉が登場して

「実は今回は、あんまり調査の時間が割けなくて、自分としては納得がいかない」

って言ってみたり(間テキスト性)、

“ごきげんよう おひさしぶり”

“せせらぎ”

に変化したりといった言葉遊びは伊坂幸太郎ワールドだなーと思いました。こういうのはかなり好き。




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