村上春樹『海辺のカフカ』

告白しますが村上春樹を読んだのは初めてです。『ノルウェイの森』も『1Q84』も読んでませんし、あまり読もうとも思ってなかったんです。これホント。
それなのに手に取ってしまったのは、おそらく古本屋のせい(もしくはおかげ)。たぶん、本に語りかけられたました。
ねえ、そこのキミ。わたしのこと読んどかないとまずいんじゃない?
そういうセレンディピティ、もしくは書架や本から発せられる「読んでね」オーラは、やはり本屋、とくに古本屋が持つ魅力です。もしくは「本の魔力」とでもいうのかもしれません。
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海辺のカフカ
村上春樹の代表作、家出する世界で一番タフな15歳の話ということは、なんとなく知っていましたが、読み終わって思ったのは、
結局、これはどういうジャンルに分類すればいいのだろう
ということ。田村カフカと彼の内面であるカラスの対話は、15歳という不安定な少年の精神性を描く純文学に近いものがある。人によっては厨二病の物語と茶化すかもしれない。森の奥の街は生と死の境の世界を暗示しているし、佐伯さんとの出会いは輪廻転生をイメージさせるし、ナカタさんとホシノくんの旅は珍道中でありながら人生訓的でもある。また田村カフカと大島さんのやり取りは哲学的でもある。さらにホシノくんの最後のミッションはオカルト?ホラー? ジョニー・ウォーカーが登場するあたりはホラーだとしても正直安っぽすぎる。
それが村上春樹ワールドです!
と言い切られてしまうと、「あー、そういうものなのかなー」と納得せざるをえないのですが、なんとなくすっきりしない上下巻。でも、読んだということで、これはこれでヨシとしようかと思ってますw
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すっきりしないけど、好きな文書は多かったので、一つだけ引用。
人ってのは生きるために生まれてくるんじゃないか。そうだろう?それなのに、生きれば生きるほど俺は中身を失っていって、ただの空っぽな人間になっていったみたいだ。そしてこの先さらに生きれば生きるほど、俺はますます空っぽで無価値な人間になっていくのかもしれない。
下巻34章、ホシノくんの言葉。同じことを思うんですよね。毎年、毎月、毎日、前に進んでいるんだろうか。昨日より今日は良くなっているんだろうか?ずるずる悪くなっていって、いつか下限を下回ってしまうんじゃないだろうか?そんな下限ってあるのだろうか?って。
勝手ですが、みんなT.S.エリオットのいう「うつろな人間たち the hollow men」でないという確信なんてない。そんな気がします。それでも朝がきて、また夜がくる。おなかも減る、欲しいものもある、眠くもなる、否が応でも日常を過ごさざるを得ない。そんなことを考えさせられたりしました。
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